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遺言書の種類

一口に遺言書と言っても、実は、全部で7種類あります
どういったものがあり、どのような特徴があるのかご存じない方もいらっしゃるでしょう。
そこで、このページでは遺言書を種類ごとにご紹介し、
その作り方メリット注意点などを簡単に解説いたします。

①自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)

一つ目の種類として、「自筆証書遺言」というものがあります。

自筆証書遺言の作り方

自筆」という言葉から分かる通り、自筆証書遺言は、ご自身で手書きして作成します。
手書きであれば良いので、用紙や筆記用具などは自由です。
ただし、法律上、全文をパソコンなどで作成し印刷、あるいはデジタルデータとして保存、
または他人が代筆して作ることは、認められていません

また、エンディングノートについては、
法律上、遺言書に求められる要素を満たすのが難しいことから、
遺言書と同じ法的機能を持たせられない、とお考えいただいて差し支えございません。

なお、法改姓により、遺言書の「本文」は手書きが必須であるものの、
添付する「財産目録」については、パソコンなどで作成し印刷することが、
認められる
ようになりました。

自筆証書遺言のメリット

自筆証書遺言の主なメリットには、

  • いつでも気軽に作れる
  • 費用がかからない
  • 遺言書を作ったことを自分だけの秘密にできる
といったことが挙げられます。
中でも、「費用がかからない」という点は、昔から、
自筆証書遺言での作成が支持されてきた大きな理由となっています。

自筆証書遺言の注意点(デメリット)

一方で、自筆証書遺言の場合、

  • なくす、他人に勝手に書き換えられるなどのリスクがある
  • 法的に無効になるリスクが他の種類の遺言書より高い
  • 死後、ご遺族などが家庭裁判所で「検認」をしなければならない
  • そのため、意外と残されたご家族に手間をかけさせてしまう
  • 場合によっては、「争族」の種になってしまうことも
といった問題点があります。
気軽に作れる反面、法的な注意点をしっかりと理解し、
どのような内容にするのか熟慮し、作成後の保管などにも気を配らないと、
作った意味がなくなってしまうこともあるのです。

法務局の保管制度について

なお、国では、上記で挙げた自筆証書遺言のデメリットを少しでも解消しようと、
法務局における「自筆証書遺言書保管制度」を始めました。
この制度を利用すると、

  • 遺言書を法務局で保管してもらえる
    なくす、他人に勝手に書き換えられるリスクがなくなる
  • 法務局で形式的なチェックが受けられる
    形式不備により遺言書が無効となるリスクがなくなる
  • 家庭裁判所での検認が不要となる
    公正証書遺言と同じく、残されたご家族の手間が減る

といったメリットがありますので、自筆証書遺言が作りやすくなったと言えます、
なお、この制度を利用する場合、

  • 制度を実施している法務局が限られている
  • 保管手数料がかかる
  • 用紙のサイズなどに法務局の規定がある
  • 死後、残されたご家族が法務局に対し、
    遺言書保管事実証明書の交付請求」をし、交付を受けた上で、
    遺言書情報請求書の交付請求」をし、交付を受けてから、
    相続手続きが始められる
  • 法務局では「内容」に関するアドバイスはしていないため、
    「争族」の種になってしまうリスクを完全には排除できない
といった、ご家族も含めて事前に知っておくべきポイントがあります
詳しくは、お近くの法務局にお尋ね下さい。

②公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)

二つ目の種類として、「公正証書遺言」というものがあります。

公正証書遺言の作り方

公正証書遺言は、公証役場で、公証人の先生に作ってもらう遺言書です。
公証人の先生が作るため、自筆証書遺言と異なり、遺言書の内容について、
一字一句ご自身で考える必要がありません。

なお、作成は基本的に「公証役場に出向く」必要がありますが、
公証人の先生に、指定の場所(ご自宅など)に出張してもらうこともできます
そのため、公証役場に足を運ぶことが難しい事情があっても、作成可能です。
例えば、入院先の病院や、入居中の老人ホームで作ることもできます。

公正証書遺言のメリット

公正証書遺言の主なメリットには、

  • 公的な文書として遺言書を作ってもらえるため、
    安全かつ確実な形で遺言書を用意することができる
  • 原本は公証役場で保存されるため、
    作成後に手渡される「正本」「謄本」を万一なくしてしまっても、
    公証役場にお願いすれば
    再発行が受けられる
  • 家庭裁判所での検認が不要となるため、
    自筆証書遺言と異なり、
    すぐに相続手続きに取りかかれる

といったことが挙げられます。

自筆証書遺言と異なり、法的に無効となってしまうリスクがほぼない上、
家庭裁判所や法務局での手続きがなく、公正証書遺言の正本または謄本があれば、
すぐに遺言書に基づく手続きが始められるという点が評価され、
年間で10万件を超える作成依頼があります(日本公証人連合会の発表による)。

公正証書遺言の注意点(デメリット)

一方で、公正証書遺言を作る場合、

  • 公証役場に支払う手数料が万単位で発生する
  • 戸籍謄本等の書類の取得、提出が必要
  • 作成時に「証人」を2人立ち会わせる必要がある
    (ご家族は証人になれないため、ご友人等にお願いすることになります。
    証人には守秘義務が課せられるとはいえ、遺言書を作ったことについて、
    他人に知られることにはなってしまいます)
  • 公証人の先生との事前の打ち合わせが何回か必要
  • これらのことから、自筆証書遺言に比べて作るのが少々面倒
といった点を、事前に理解しておく必要があります。

自筆証書遺言と公正証書遺言、どっちの方が良い?

それぞれのメリット、注意点をご覧いただきましたが、
では、自筆証書遺言公正証書遺言どちらの方が良いのでしょうか。

当事務所では、公正証書遺言の方が断然良いと考えています。

公正証書遺言の場合、作るために時間、手間、費用が多く発生してしまいますが、
お亡くなりになられた後、残されたご家族のご負担を考えたときに、
メリットが自筆証書遺言を上回るためです。

ただ、自筆証書遺言が全然だめだというわけではなく、
人によっては、自筆証書遺言の方が向いている場合もあります。

お持ちの財産の内容や、遺産の分け方に関するお考え、
相続人となるご家族にどなたがいらっしゃるのか、など、
様々な条件によって、どちらが最適か、も変わってきます。

そのため、行政書士など、遺言書作りの専門家にアドバイスを求め、
どちらの種類にするかを決めることをお勧めします

その他の種類

遺言書には、上記の2種類に加えてあと5種類あるのですが、
残りのものについてかなり特殊な遺言書であり、
利用する場面が少ないため、名称と簡単な概要の紹介にとどめておきます。

秘密証書遺言

自分で、または他人に書いてもらった遺言書を公証人の先生に公証してもらう遺言書です。
自筆証書遺言と公正証書遺言のハイブリッドのような形式ですが、
他人による代筆が認められている、というのが大きな特徴です。

なお、公証人の先生に公証してもらう際、証人2人以上が必要です。
利便性に欠けるため、ほとんど利用されていません。

死亡危急時遺言

病気等で死が迫っていて、自分で遺言書を書く体力も、
公証人の先生に病院に来てもらって遺言書を作る余裕もない時に作る遺言書です。
口頭で遺言の内容を伝え、その内容をメモしてもらうことで作ります。

作成にあたっては、証人3人以上が必要となるほか、家庭裁判所での手続きもあるため、
ほとんど利用されていませんが、年間に数件はこの形式で作られているそうです。

難船時遺言

こちらは、例えば、沈没しかけているなど、遭難した船の中にいて、
自らに死の危険が迫っている時に作る遺言書となっています。
作成にあたっては、証人2人以上が必要です。

主に船長さんの利用を想定して、この形式が法律に規定されたようですが、
実際には、遭難して沈没しかけているなら、全員が安全に避難することが優先ですので、
この形式で遺言書を作る余裕はないものと考えられます。

伝染病隔離時遺言

こちらは、伝染病にかかり、隔離病棟に入院中に作ることのできる遺言書です。
作成にあたっては、警察官1人と証人1人以上が必要となっています。

例えば、新型コロナウイルスに感染し、隔離病棟に入院するに至った際に、
この形式での遺言書を作ることが法律上は可能でした。
ただ、隔離病棟に警察官を入れることが実質的に難しいことや、
この形式があまりにもマイナーすぎることなどから、
新型コロナウイルス蔓延期に、この形式の遺言書が作られたという話を、
少なくとも、当事務所代表は聞いたことがありません。

在船時遺言

こちらは、船に乗船中に作れる遺言書です(港に停泊中を除きます)。
難船時遺言と異なり、通常航行中に作ることができます。
作成にあたっては、船長または乗組員1人と証人2人以上が必要です。

主な利用用途としては、世界一周クルーズや遠洋漁業など、
長期間の船旅において、乗客や乗組員の方が、
航行中、ご自身に万一のことがあった際に備えて作る…ということになるのですが、
これもやはり、ほぼ作られていません。
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